「デザインの仕事がしたい」「クリエイティブな職種に興味がある」。そう感じて就職活動を始めたものの、プロダクトデザイナー、グラフィックデザイナー、Webデザイナー、ディレクター、企画職など、似たような名前の仕事が多くて違いが分かりにくいと感じる方は少なくありません。
特に雑貨やグッズが好きな学生にとっては、「自分の“好き”に近い仕事はどれなのか」「どんな会社を選べば、その仕事に関われるのか」が気になるところだと思います。一方で、「クリエイティブ職=センスがある人だけの特別な世界」というイメージが先行し、不安を感じてしまう方もいるかもしれません。
この記事では、雑貨・グッズが好きな新卒の方に向けて、「クリエイティブ職」と呼ばれる仕事の全体像や、関われる領域の違い、自分に合った仕事を考えるためのヒントを整理していきます。ものづくりやデザインに関心がある方が、少しでも自分の進みたい方向性を描きやすくなることを目指した内容です。
クリエイティブ職ってどんな仕事?まずは全体像を整理する
クリエイティブ職と一口に言っても、その中身はさまざまです。完成したアウトプットだけを見ると似て見えることもありますが、日々向き合っている対象や、関わるプロセス、求められる役割には大きな違いがあります。
たとえば、雑貨や文房具など「モノ」を中心に扱う仕事もあれば、広告やWebサイトのように「情報や体験」を中心に扱う仕事もあります。また、コンセプトを考える上流部分が主な役割の仕事もあれば、細部のクオリティを磨き上げる下流工程に強みを持つ仕事もあります。
こうした違いを理解するためには、「何をつくる仕事なのか」「どこからどこまで関わる仕事なのか」という二つの視点で整理してみるのが有効です。この章では、特に雑貨やグッズが好きな人に近いクリエイティブ職を中心に、代表的な職種を見ていきます。
プロダクト・雑貨デザイナー:“モノそのもの”をカタチづくる仕事
プロダクトデザイナーや雑貨デザイナーは、文字通り「モノそのもの」をデザインする仕事です。文房具や収納アイテム、バッグ、インテリア小物など、実際に手で触れ、日常生活で使われるものの形や構造、素材を考えます。
この仕事の特徴は、見た目の美しさだけでなく、「使いやすさ」や「持ったときの心地よさ」に強く関わる点です。たとえばペンひとつとっても、太さや重さ、持つ部分の形状によって書きやすさが変わります。収納ボックスであれば、持ち手の位置やフタの開閉のしやすさが使い勝手を左右します。
雑貨デザイナーは、こうした細かな要素を総合的に考えながら、“暮らしの中でどう使われるか”という視点でデザインしていきます。「生活に寄り添うモノをつくりたい」という気持ちが強い人に向いている領域です。
グラフィック・パッケージデザイナー:視覚表現で印象をつくる仕事
グラフィックデザイナーは、ロゴやポスター、チラシ、パッケージ、カタログなど、「視覚的なコミュニケーション」を中心に扱う仕事です。雑貨やグッズの世界とも関わりが深く、商品ロゴやパッケージデザイン、タグや説明書のレイアウトなどもグラフィックの領域に含まれます。
この職種では、図形や色、フォントの選び方だけでなく、「どのような印象を伝えたいのか」「誰に向けたデザインなのか」といったコミュニケーションの設計がとても重要です。同じ商品でも、パッケージやビジュアルの見せ方によって“高級感がある”“親しみやすい”“遊び心がある”といった印象は大きく変わります。
雑貨そのものというより、「雑貨をどう見せるか」「ブランドの世界観をどう伝えるか」に興味がある人は、グラフィックやパッケージデザインの仕事に可能性を感じやすいかもしれません。
Web・デジタルクリエイティブ:画面の中の体験をデザインする仕事
WebデザイナーやUIデザイナーは、サイトやアプリなどの“画面上の体験”をデザインする仕事です。雑貨やグッズの販売ページ、ブランドサイト、オンラインストアなどもこの領域に含まれます。
ここでは、単に見た目を整えるだけではなく、「どの順番で情報を見せると分かりやすいか」「どこにボタンがあればストレスなく操作できるか」といった、体験そのものを設計する視点が求められます。グッズをオンラインで販売する企業の場合、商品ページの構成や写真の見せ方ひとつで売れ行きが変わることもあるため、Webのクリエイティブは非常に重要な役割を担います。
画面づくりやデジタルサービスに興味があり、「モノの良さをオンライン上でどう伝えるか」を考えるのが好きな人にとって、魅力的な選択肢になる領域です。
企画職・ディレクター:“全体の方向性”をつくり、動かす仕事
企画職やディレクターは、自分の手でデザインを行うだけではなく、プロジェクト全体の方向性を考え、関係者をまとめていく仕事です。雑貨やグッズに関わるケースでは、「どんなアイテムをつくるのか」「誰に向けて発信するのか」「どのチャネルで届けるのか」といった企画を立て、必要に応じてデザイナーや生産管理、営業などと連携しながら進行していきます。
自分で手を動かすこと以上に、「アイデアを形にするための道筋をつくる」「関係者と一緒に成果をつくる」ことにやりがいを感じるタイプの人に向いているポジションです。学生のうちから、広告や商品企画、マーケティングなどにも興味がある人は、こうした役割を視野に入れておくと、将来の選択肢が広がります。
新卒がクリエイティブ職を目指すときに意識したい準備
クリエイティブ職を目指すとき、多くの学生が気にするのが「どのくらいのスキルが必要なのか」「どんな準備をしておけばいいのか」という点です。実務で求められるレベルは企業や職種によって異なりますが、新卒の段階で完璧さを求められることはほとんどありません。それよりも、「どんな姿勢で学び、どう成長していけるか」という点が重視されます。
ここでは、ポートフォリオの考え方や、現場で評価されやすい視点について整理していきます。
ポートフォリオは“作品集”ではなく“思考の記録”
ポートフォリオというと、「完成した作品をきれいに並べるもの」というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、採用側が知りたいのは、美しい完成品そのものだけではなく、そこに至るまでの考え方や試行錯誤のプロセスです。
課題のテーマをどう解釈し、誰のどんな状況を思い浮かべ、どの案とどの案で悩み、最終的に何を理由にその形を選んだのか。そうした流れが丁寧に書かれているポートフォリオは、その人の伸びしろや、仕事への向き合い方を具体的にイメージさせてくれます。
完璧な作品が並んでいなくても構いません。「ここはうまくいかなかった」「次にやるならこう改善したい」といった気づきこそが、現場に入ってからの成長につながります。ポートフォリオを、“自分の思考の歩みを共有するツール”として捉えてみると、準備の方向性が少し見えやすくなってきます。
“好き”を言葉にすることが、選考でも仕事でも力になる
雑貨やグッズが好き、デザインが好き、ものづくりが好き。その気持ちはクリエイティブ職を目指すうえで、とても大切な出発点です。一方で、選考の場では「なぜ好きなのか」「どんなところに惹かれているのか」を具体的に言葉にできるかどうかが、説得力を左右します。
たとえば、「雑貨が好きです」という一言だけではなく、「日常の中にさりげなく溶け込むデザインに惹かれる」「同じ用途のものでも、形や素材の違いで気持ちが変わる瞬間が面白い」など、自分なりの視点で語れると、その人らしさが伝わりやすくなります。
こうした言葉にする力は、入社後にも生きてきます。自分のアイデアをチームに伝えるときや、クライアントに提案を説明するとき、「なんとなく良い」ではなく、「なぜこの形がふさわしいのか」を言葉で伝える場面は必ず訪れます。学生のうちから、好きなものについて少し深く考えてみる習慣が、大きな武器になっていきます。
現場で評価されるのは、スキルと同じくらい“姿勢”
もちろん、一定のソフトウェアスキルや表現力があると、選択肢は広がります。しかし、同じくらい、あるいはそれ以上に見られているのが「周囲と協力しながら仕事を進める姿勢」や「分からないことをそのままにしない素直さ」です。
クリエイティブ職は、一人で完結する仕事ではありません。企画営業や生産管理、他のデザイナー、場合によっては社外のパートナーなど、多くの人とやり取りをしながらアウトプットを形にしていきます。その中で、「相手の立場を理解しようとする」「意見を聞きながら、自分なりに考える」「フィードバックを前向きに受け止める」といった姿勢は、実務において非常に大きな価値を持ちます。
新卒だからこそ、完璧なスキル以上に、“伸びていきそうかどうか”が見られます。スキルに自信がない段階でも、姿勢次第で評価される余地があることを知っておくと、少し気持ちが楽になるかもしれません。
自分に合うクリエイティブ職を考えるためのヒント
ここまで見てきたように、クリエイティブ職と一口に言っても、扱う対象や関わるプロセス、働き方は多岐にわたります。その中から、自分に合う方向性を考えていくためには、「自分はどんなときに楽しさを感じるのか」「仕事を通じて、何を大切にしたいのか」を静かに振り返ってみることが大切です。
この章では、仕事選びのものさしとして役立つ、いくつかの視点を紹介します。
“どの瞬間が一番好きか”を思い返してみる
ものづくりが好きと感じるとき、そのプロセスのどの瞬間に一番ワクワクするかは、人によって異なります。アイデアを考えているときが一番楽しい人もいれば、形になったものを誰かに見せる瞬間が好きな人もいますし、細部を詰めていく作業が何より落ち着くという人もいます。
企画やディレクションに近い仕事ほど、最初の方の「方向性を決める」フェーズに長く関わることが多く、デザインや設計に近い仕事ほど、形をつくり込んでいく時間が長くなります。自分がどの瞬間に楽しさを感じやすいのかを振り返ってみると、きっと自分に合う職種や働き方のヒントが見えてくるはずです。
どこまで関わりたいかで、選ぶ会社も変わってくる
同じクリエイティブ職でも、「どこからどこまで関わるか」は会社によって大きく違います。コンセプトづくりから制作、納品後の振り返りまで一貫して関わる仕事もあれば、特定の工程に専門的に携わる働き方もあります。
広くいろいろな経験をしたい人は、多職種と連携しながらプロジェクト全体に関われる環境に魅力を感じるかもしれません。一方で、ある工程にじっくり向き合い、技術を深めていきたい人は、特定の領域に強みを持つ会社が向いている場合もあります。
会社選びのときには、「職種名」だけでなく、「その会社で、どのプロセスにどのような形で関われるのか」という点にも目を向けてみると、自分との相性を判断しやすくなります。
仕事を通じて、何を大切にしたいのかを言葉にしてみる
最後に、どんなクリエイティブ職を選ぶにせよ、「仕事を通して何を大切にしたいのか」を自分なりの言葉で持っておくことは、長く働くうえでの支えになります。
たとえば、「生活の中の小さな快適さを増やしたい」「ブランドの世界観をていねいに伝えたい」「人の記憶に残る体験をつくりたい」「チームで一つのものをつくることに喜びを感じる」といった価値観は、どの職種にもつながり得るものです。そのうえで、自分の価値観と、会社や仕事の方向性がどれくらい重なっているかを考えてみると、納得感のある選択に近づいていきます。
「とりあえずデザイナー」と一括りにせず、自分の大切にしたい感覚に耳を傾けながら、ゆっくりと選んでいくことが、結果的に良いマッチングにつながります。
まとめ
クリエイティブ職という言葉の中には、雑貨やプロダクト、グラフィック、Web、企画、ディレクションなど、さまざまな仕事が含まれています。それぞれに扱う対象や関わるプロセス、働き方ややりがいのポイントがあり、一人ひとりの「好き」や「楽しい」との相性も少しずつ異なります。
雑貨やグッズが好きな人にとっては、「モノそのものをデザインする仕事」もあれば、「モノをどう見せるかを考える仕事」「モノを通じた体験を企画する仕事」もあります。どの道を選んだとしても、共通して求められるのは、日々の暮らしや人の感情に目を向けること、そして自分の考えを言葉にして他者と共有していく姿勢です。
就職活動の段階では、まだ具体的な職種を一つに絞り切れなくても問題ありません。むしろ、「自分はどんな瞬間が好きか」「何を大切に働きたいか」を見つめながら、少しずつ世界を広げていく時期だと捉えてみると、選択肢は豊かになります。
クリエイティブな仕事は、特別な才能を持つ人だけのものではありません。日々の中で感じた違和感やときめきを大切にし、それを形にしていこうとする姿勢そのものが、クリエイティブなキャリアの出発点になります。あなたの「好き」がどの仕事とつながっていくのか、この記事が考えるきっかけになれば幸いです。
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