AI時代に求められる力とは?ものづくりの現場から見た仕事の変化にする

生成AIが文章も画像も資料もつくれるようになり、「自分が就く仕事は残るのか」と考える学生も増えているのではないでしょうか?実際、この1、2年の急速なAIの発展により置き換わった作業も少なくありません。

一方で、すべての仕事がAIに取って代わるわけでもありません。変わるのは仕事そのものではなく、AIと人間それぞれの役割です。

この記事では、AIで何ができるようになったのかを整理したうえで、ユニファーストが実際にAIをどう使っているか、そして人が担い続けなければならない役割はどこにあるのかを説明します。

AIでできるようになったこと

生成AIの進化は、ここ数年で急速に進みました。文章の作成、要約、翻訳、資料の下書き、画像の生成、プログラムの作成。
数年前まで人の手が必要だった作業の多くが、指示を出すだけで一定の水準まで仕上がるようになっています。

就職活動の場面でも同様でしょう。たとえば、リクナビのアプリには、4つの質問に答えるとAIがガクチカの素案を作成する機能が実装されています。企業側も、採用業務にAIを導入する動きが広がっています。

一方で、AIが得意なことには傾向があります。過去のデータから学習し、与えられた条件のなかで一定の答えを出すことは得意です。
反対に、条件そのものが定まっていない状況で何を優先するかを決めること、物理的な制約と照らして実現可能かを判断することは、現時点では人が担っています。

この変化を前提としたうえで、では働き方はどう変わっていくのか。今回はユニファーストでの事例をもとに考えていきましょう。

ユニファーストの採用でのAI活用

2026年から、新卒採用に「橋本社長AI」を導入しています。代表・橋本の考え方や価値観、これまでの発信内容をもとに構築したAIコミュニケーションツールで、就職活動中の学生が時間や場所を問わず対話でき、会社や経営者の考え方について理解を深められるものです。

この取り組みは、2026年8月27日付の繊維ニュース2面「往来」でも紹介されました。代表の橋本は、この仕組みについて次のように述べています。

「AIは人同士のコミュニケーションに代わるものではなく、その前段階でお互いが理解するための新しい接点だと捉えています。」

面接という限られた時間の前に、学生側が会社を理解する手段を増やす。そのための道具としてAIを位置づけているということです。

私たちは今後も、AIをはじめとした新しいテクノロジーを活用しながら、学生一人ひとりとのリアルな対話も大切にする方針で採用活動を進めています。

AIが描いた画像は、そのままでは製品にならない

ものづくりの現場でも、画像生成AIの応用は検討を進めている領域です。
オリジナルグッズの企画では、これまで言葉やラフなスケッチでイメージを伝えるしかありませんでした。画像生成AIを使えば、漠然としたアイデアも視覚的なアウトプットとして確認でき、企画段階から関係者のイメージを揃えられます。

「未来的なキーホルダーをつくりたい」という要望に対して、具体的なビジュアルをその場で提示する。従来の既製品ベースの提案では難しかった企画にも取り組みやすくなります。

ただし、ここから先が問題になります。イメージを可視化できることと、それを実際の商品として製造できることは別だからです。
画像上で魅力的に見えるデザインでも、実物にしたときの使いやすさや安全性、製造効率を考慮しなければ商品として成立しません。
素材が調達できるのか。その形状で縫製できるのか。想定する予算とロット数で採算が合うのか。落下時に破損しないか。子どもが使う想定なら、安全基準を満たしているか。

こうした判断は、画像を見ただけでは下せません。素材や構造の知識、工場の生産条件の把握、過去の失敗事例の蓄積が必要になります。

「つくれる」と「つくっていい」は別

技術的につくれるかどうかと、実際に製品として世に出していいかどうかは別の問題です。
たとえば、キッコーマン様のグループ会社からいただいた「醤油卓上壜のクッションをつくりたい」というご相談では、特殊な形状を再現するために工夫が必要でした。
サンプル作成で再現度を高めながら、工場へ細かな指示を繰り返し、最終的に納得いただける製品に仕上げています。

AIがビジュアルを出せても、この工程は代替されません。むしろ、イメージが精緻になるほど、それを現実に着地させる難易度は上がります。

AIが置き換えるのは職種ではなく作業

「この職種はなくなる」という議論をあらゆる業界で見かけるようになりましたが、実際に置き換わっているのは職種そのものではなく、そのなかの一部の作業だと感じています。

デザイナーの仕事を例にすると、ラフ案を複数出す工程はAIで短縮できます。一方で、お客様の要望を聞いて方向性を決める、印刷や縫製の制約に合わせて調整する、量産時の再現性を確認するといった工程は残ります。

つまり、ひとつの職種のなかで作業の内訳が変わっていくという見方のほうが、実態には近いはずです。
そのため、職種名だけで判断するのではなく、その仕事のどの部分に時間を使うのかを見ておくことが重要になります。

人が担い続けている部分

では、具体的にどこを人が担っているのか。ユニファーストの仕事に即して3つ挙げます。

まずは、目的を聞き出すこと。お客様から寄せられる相談は、「こういうものをつくりたい」という形とは限りません。
「新しい客層に知ってほしい」「社員のモチベーションを上げたい」といった、まだアイテムに落とし込まれていない段階の相談も少なくありません。何のために、誰に届けるのか。
そこを一緒に整理する作業は、相手の事情を聞きながら進めるしかありません。

そして、実現可能性の判断です。前述のとおり、画像を製品にするには素材、構造、コスト、安全性、納期という複数の条件を同時に満たす必要があります。
どこを優先し、どこを妥協するか。この判断には、過去の案件で何が起きたかという経験が効いてきます。

最後に、関係者の調整も人だからできることといえます。ひとつの案件には営業、デザイナー、生産管理、品質管理、そして国内外の工場が関わります。
それぞれ立場も優先順位も違うなかで、全体を同じ方向に向けていく。合意形成の作業であり、指示を出して完結するものではありません。

やり直しが効く力

もうひとつ挙げるとすれば、うまくいかなかったときに方法を変えられることです。
提案が通らない、試作品が想定と違う仕上がりになる、納期の調整が必要になる。仕事では、一度で決まらない場面のほうが多くあります。
そこで何が原因だったかを確認し、別の手を考えて再度動く。この繰り返しは、正解が定まっていない状況での判断の連続です。

AIは、与えられた条件のなかで答えを出すことは得意です。一方、そもそも条件が変わったときに何を優先し直すかは、人が決めることになります。

AIを使う前提で働くということ

人が担う部分が残るからといって、AIを使わないという話ではありません。実際の業務では、使える場面では使うことが前提になります。

たとえば企画の初期段階で複数のビジュアル案を出す、海外工場とのやり取りで文面を整える、過去の類似案件を探すといった使い方が考えられます。
こうした作業に時間をかけていた分を、お客様と話す時間や、試作品を確認する時間に回すことができます。

重要なのは、AIが出した結果をそのまま使わないことです。生成されたビジュアルが製造可能かどうかは、人が判断する必要があります。
翻訳された文面が工場に正しく伝わるかどうかも同様です。判断の材料としては有効ですが、判断そのものを預けることはできません。

使いこなすには、判断の基準が要る

AIの出力が適切かどうかを見極めるには、その分野の知識が前提になります。素材の知識がなければ、生成された画像が実現可能かどうかは分かりません。

つまり、AIを使いこなすほど、使う側の知識や経験が問われることになります。道具が増えても、それを扱う側の判断力まで代わってくれるわけではありません。

これから仕事を選ぶ人へ

AIができることが増えたからといって、人の仕事がなくなるわけではありません。ただし、求められる比重は変わります。

情報を集める、文章にまとめる、資料の形に整える。こうした作業の価値は相対的に下がっていきます。
逆に、相手の状況を聞いて目的を定める、複数の制約のなかで判断する、関係者を巻き込んで前に進める。こうした部分の比重は上がります。

会社を選ぶときの視点として、その仕事のどこまでが定型作業で、どこからが判断なのかを見ておくと参考になります。
指示どおりに進める工程が中心なのか、自分で条件を組み立てる場面があるのか。同じ職種名でも、会社によってこの比率は変わります。

まとめ

ユニファーストは創業以来、「つくりたいをカタチに」という理念を掲げてきました。
AIによって「つくりたい」を描く手段が広がったことは、この理念にとって追い風だと考えています。

一方で、描かれたものを実際のカタチにする工程には、依然として人の判断が必要です。素材を選び、工場と調整し、想定と違う結果が出たら方法を変える。1981年の設立以来、40年以上ノベルティ製作を続けてきたなかで蓄積してきたのは、この部分の経験です。

AIを使わない理由はありません。使ったうえで、人が向き合うべきところに時間を割く。採用でも、ものづくりでも、私たちはその考え方で取り組んでいます。

仕事の選び方に正解はありませんが、判断する場面が多い仕事を探しているのなら、ものづくりの現場は選択肢のひとつになります。
学生時代の経験をどう振り返り、どう伝えるかについても別の記事で解説しています。AIを使って書類を準備する際の注意点にも触れていますので、あわせてご覧ください。

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